24.06.04 24.06.07 更新

ファッションデザイナー岡本大陸氏による特別講演会~ファッションに懸ける想いを語る~【バンタンデザイン研究所大阪校】

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3月15日に開催された、ファッションデザイナー岡本大陸氏による特別講演会。

質問形式で行なわれた本講演会。

ファッション学部の在校生からの質問にもたくさんお応えいただきました!

【オープニング】

はじめは、大陸さんのブランドDAIRIKUの最新コレクション『DAIRIKU 24AW Runway Show』の様子を動画で視聴。

 

「これは地下競技場をイメージした世界観。映画の『ファイトクラブ』に着想を得て、作りました」

「主人公をファーストルックに持ってくるイメージ。BGMも含めて、映画のセットを作っているような感覚でショーをしています」と大陸氏。解説を交えてショーの様子を説明します。

【質問形式による講演会がスタート!】

■来シーズンのコレクションについて

──テーマを教えてください。

先程見てもらったショー(動画)と被りますが、『ファイトクラブ』など、自分の知らない世界を知ってしまった感がテーマ。

アンチヒーローたちの正義を代弁するような感じが面白いなと。

『ファイトクラブ』は暴力的なシーンもありますが、たとえばそんな映画を見てみたくなる衝動をテーマにしています。

 

デザインでは、映画の主人公の人物像を意識しています。

たとえばシャツのボタンは全部止めているのか、第2ボタンまで開けているのかみたいな。

今回はやさぐれた感じが多かったかも。

 

あとはファスナーやボタンもテーマに合わせて考えます。刺繍とかスパンコールとかも。

帽子の有無、ファスナーの大小まで人物像を想像して考えます。

 

──どんな気持ちで取り組みましたか?

2シーズン通してやってみたい想いがありました。

大変だけどどこまでやれるか挑戦的な気持ちです。

直接見てほしいですね。動画だけで伝わったかな…。

 

──ショーの魅力を教えてください。

演出も込みで表現したい世界観やブランド感を、ショーを通じて伝えられる。ストレートに直接見せるほうがわかりやすいですから。

 

 

■学生時代について

──どのような学生で、どんなバンタン生活を送っていましたか?

服がめちゃくちゃ好きで。

自負できるくらいの気持ちで入学しました。

 

実際入学してみると、絵が上手い子もいて、パターンも苦手だし、

”ファッションが好き”だけじゃ…と感じたこともあります。普通の学生だったかな。

 

ただ負けず嫌いだったので、とにかくコレクションのことをずっと考えていました。

毎年開催されるバンタンのイベント「カッティングエッジでショーをすることを考えていましたね。

週5~6日で自習室にいました。バンタンに住み着いていました(笑)

 

在学中は「展示会をしたい」「ショーをしたい」が目標であり夢でした。

 

──ファッションに興味を持ったきっかけは?

アメ村でビンテージの古着屋さんで見たことのない服に出会いました。

それからスナップサイトで流行りを検索したり、自分でも服を作ってみたり。

入学したら、思うように縫製もパターンもできない。早く進めたいのにできない葛藤がありましたね。

 

 

──1番頑張ったことは?

「カッティングエッジとったるぞ」

「AFCをとってニューヨーク行きたい」と思って取り組んでいました。

同期で先にニューヨークに行った人がいて。悔しかったですね。

 

大阪校を卒業後は、東京にあるX-SEED(エクシード)へ入学。

ニューヨークに行くために、東京や岐阜、大阪、兵庫の工場を回りました。

岐阜はウール、兵庫はコットンの産地。

いろんな産地があるので、出向いてみるのはめちゃくちゃ大事です。

「こんな環境で服が縫われているんや」とか「1着ずつ全部手で縫っている」とか。

織り機の仕組みを知ることも大切です。

 

とにかく自分の足を使って、サンプル生地を作ってもらえる場所を探すこと。

アナログな世界なので、顔を合わせて取り組まないと信頼も得られません。これを学生時代にやっていました。

結果、ニューヨークでもコレクションができました。

 

※AFC…Asia fashion collectionの略。

バンタンとPARCOが主催する若手デザイナーの発掘・インキュベート(起業支援)を目的としたプロジェクト。

※X-SEED(エクシード)…バンタンデザイン研究所の中でもファッションデザイン系の最高峰クラス。

 

 

■卒業後について

──卒業後の進路について教えてください。

海外でコレクションをやれたことで自信がつきました。

3月にX-SEEDを卒業して、その年の8月まで展示会に向けて準備。

自分のブランドのために動いていました。

当時は別のブランドのアシスタントやバンタン東京校のTA(ティーチングアシスタント)もやりながら、自分のこともしていました。

 

 

──大変だったことはなんですか?

資金を集めたり、展示会場を探したり。

また、ハンガーやラインシード(展示会資料)を作るなど、ブランドをやるために手探り状態でした。

 

ブランドが軌道に乗ったきっかけは、プレス会社の方から合同展示会をやろうと声をかけいただいて。

色々なバイヤーさんが来てくれてセールスにつながりました。

取引先が2シーズン目から徐々に増えていき、今に至ります。

 

■現在について

──業界の流れや動向について、どう考えていますか?

偉そうなことは言えないですけど。今は自由度が高い。SNSなど発信方法が増えています。

色々な見せ方ができるようになりました。その代わり責任も伴います。

 

 

──ブランドの立ち上げに必要なことは?

とにかくいろんな人に「やりたい!」と言ったらいいと思います。

言霊みたいに。黙っていたら何がしたい人かわからないですから。自分へのいいプレッシャーにもなります。

 

 

──デザイナーとしてどんな1日ですか?

展示会なのかショーなのかで異なりますが、今はショーの後なので、生地屋さんを回ったり、次はどんなコレクションにするかを考えたりしています。

でも趣味の延長戦みたいな感じです。古着も映画も好きですから。

飲みに行って、服の話をして「ソレええやん」みたいなときも。次はSFっぽくしたいですね。

 

──ブランドの運営(立ち上げ)にお金はかかる?

ブランドの形も色々です。

以前は「リメイクした服を売って資金にして、ブランドを立ち上げる」といった所もありました。

また、「はじめはシャツだけのブランドだったけど、売れてからトータルでやる」とか。

やり方はいっぱいあります。

いかに資金を集めるかも腕の見せ所です。

お金が無理だからと諦めるのはもったいないですから。

 

 

今後について

──大陸さんの目標は?

次はパリでショーをしたいですね。自分のお店も。

シーズンごとに空間の見せ方、内装と場所、服を一緒に見せる演出をやっていきたいです。

 

 

──ブランド独立/デザイナーを目指す学生が学んでおいた方がいいことは?

アメ村は古着屋もあれば、大通りにハイブランドの路面店もある。

堀江にはセレクトショップがあり、船場は繊維のまち。

学生時代は古着屋やセレクトショップ、路面店に行って、縫製の仕方を見ていました。

古着屋では、なぜここにポケットがあるのかの説明を受けたこともありました。

ここはいろんなファッションが混在している場所です。立地の良さを活用してほしいですね。

 

あと、いろんな人に会って、いろんな所へ行くことで、養われるものも。

どれだけ貪欲に知るか、それが自分だけの服作りにつながります。

 

 

【ここからは学生による質疑応答!】

──日常の中で、服に落とし込める瞬間はありますか?

その辺を歩いてて、「おじいちゃん、変な着方してるけどええやん」とか

「アノ色とアノ色の組み合わせいい」とか。

ニットは自分のスタイリストさんが裏返しに着ていた。

それをいいと思ってやったことも。ふと気づくことが多いです。

──いい服、面白い服、面白くない服の違いは?

面白いとか面白くないとかは、その人の好みやブランドの違い。

「これいいな、この生地着たいな」は自分の感覚ですね。好きなものはスッと入ってきます。

──ショーは映画を参考にされていますが、ルックはどう考えていますか?

ルックの撮影も映画を撮るような感じ。映画のワンシーンをイメージしています。

映画のポスターにできるイメージで撮影しています。

 

 

──映画の見方は?

服・空気感・映像の撮り方を見ています。

あとは、監督が何に影響を受けて映画作りをするようになったのかも。

監督自身の生活、人との関わり、生い立ち、国を知ると、内容を深掘りできます。

 

実はドリフターズも映画を参考にしてコメディにしているところがあるんです。こうした背景を知っていくことが面白い。

音楽もデザイナーも何に影響を受けているか深掘りしていくと、自分の”好き”に気づけるかもしれません。

 

──スタイリスト志望ですが、デザイナーから見て「こんな人だったらいいな」はありますか?

僕の場合は、話が合う、好きなことが似てる、映画のシーンで共感できるとかかな。ぶつかり合える人もいいなと思います。

人間関係なので、続かないと意味がないかなと。

でも、1番は優しい人です(笑)

 

【学生のみなさんへメッセージを!】

自分で動き、聞いて、見て、色々な人と関わって…が大切。

お客さんが服を着ると知らないうちに、人間関係が成立している世界です。

作りたいものがあれば、そこへ出向く。これがいいのかなと思います。

「自分はこれをやりたいです」と伝えていってください。

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ファッションデザイナー 岡本大陸

1984年生まれ。バンタンデザイン研究所在学中に、自身のブランドDAIRIKU(ダイリク)をスタート。

2016年10月 Asia fashion collectionにてグランプリを獲得。2017年2月 NYファッションウィークにて、ブランド初となるランウェイ形式でコレクションを発表。

 

2018年 春夏シーズンより展示会形式で本格始動。

2021年 『PEANUTS』とコラボレーション。大陸氏が幼少期から親しみを持つ『Woodstock』をフィーチャーしたアイテムを展開。

2022年 春夏シーズン、初のレディースアイテムが登場。

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