AI時代に求められるブランドとは?「VANTAN BRAND SUPPORT PROGRAM」1次審査にて、「WWDJAPAN」ヘッドリポーター、「DAIRIKU」デザイナーらが評価
バンタンデザイン研究所発、ブランド支援プロジェクト「VANTAN BRAND SUPPORT PROGRAM(VBS)」が始動しています。
2026年7月2日に行われた審査会には、東京校・名古屋校・大阪校から全29名のメンバーがエントリー。審査員を務めた「WWDJAPAN」ヘッドリポーター木村和花さん、「DAIRIKU」デザイナー岡本大陸さんの評価と、ブランド独立を志す山田雄也さん、酒井美奈さんの姿を追いました。
■1. VANTAN BRAND SUPPORT PROGRAMとは
VANTAN BRAND SUPPORT PROGRAM(VBS)は、アパレルブランド独立を志す在学メンバーの支援を目的としたプロジェクト。
バンタンを代表する若手デザイナーブランドを選出し、バイヤーやメディアを招致した審査会・展示会への出展権を提供します。源流は、バンタンとパルコが共同主催し、若手デザイナーを「ニューヨーク・ファッション・ウィーク」へ送り出してきた「Asia Fashion Collection(AFC)」。
「DAIRIKU」をはじめ数々のブランドを輩出してきました。
■2.「これ以上見たい、と思わせる力があるか?」——木村和花・「WWDJAPAN」ヘッドリポーター
1次審査の題材は、ブランドブック。木村和花さんは、29名のポートフォリオすべてに丁寧に目を通しました。
木村さん「全体的にレベルの高さに驚いたというのが、率直な感想です。そもそも、一人ひとりが強い世界観を持っているなという印象です」
そして、清本朝男デザイナーによる「ASAO」のブックを手に取り
木村さん「自分の思考を、洋服を通して表現する力が非常に高いですね。『こういう感情をこういう素材で表現したい』という、洋服を通しての表現力やコミュニケーション力があるなと思いました」と評価。
さらに山田さんの「Human Post Script」について「観察眼があり、今の時代性のようなものをすごく敏感に捉えていて、そこにユーモアを加えて表現しているなと感じます」と評価。一方で、「一部のデザイナーは非常に内省的で、時間をかけてコンセプトを作っていることは伝わるのですが、いざ洋服にした時に『人が着たいと思うか?』という視点が欠けているケースがあります。他人に『着たい!』と思わせる力が足りないかもしれません」
――審査基準には、「ビジネス、コミュニケーション、クリエイティブ」が設けられていますが、加えて木村さんが見ていた基準は?
木村さん「ブックから『何を作りたいか』が伝わってくるか。さらに『デザイン画以上を見たい』と思えることを重視しました」
■3. 「世界観があるブランドを評価したい」——岡本大陸・「DAIRIKU」デザイナー
国内外から注目を集める「DAIRIKU」デザイナーの岡本大陸さん。
「特に印象に残ったブックは?」という問いに手に取ったのは「Lorn Sprout」で「ブランドの世界観がしっかりある。やりたいこともあるし、古着の解釈もいい。ただ、こんなに作り込んでいるのであれば、もう少し値段を上げてもいいかもしれません」。
「Human Post Script」については「発想が良い。今の世の中の不満も伝わり、一つひとつのディテールも面白いです」と評価しました。また、「偉そうに聞こえてしまったら申し訳ないのですが」と前置きし、「時代かもしれないですけど、AIでデザインを描いているのは、僕的には『なし』かな、と思っています。いや、用いること自体は全然いいんですけど、学生のうちにそれに頼っちゃうと、シルエットを自分で作ることを考えなくなってしまう気がするんですよ。全体的にはデザイナー自身が、色々と模索しているのがすごく伝わるので、良かったです」とコメント。
■4.「AIやシステムがどれだけ発達しても、人間らしさを忘れないための服」——山田雄也・「Human Post Script」デザイナー
1次審査で審査員から評価を得たのが、山田雄也さんの「Human Post Script」です
入学前はシステムエンジニアとして働いていた経歴を持ちます。
ブランド名は、エンジニア用語の『スクリプト』、手紙の『PS(追伸)』、さらに単語を入れ替えると『Post Human』に読み替えられる可変性に由来。一見すると難解なブランド名を「端的に言うと?」と尋ねると、笑顔で「AIやシステムがどれだけ発達しても、人間らしさを忘れないための服です」と説明。シーズンコンセプトは「Return to Form」(輪郭の再獲得)で、「今のSNS社会って、他人の良いところばかりが見えますよね。僕自身も日々、『これは自分がやっている仕事だけど、他の誰かでもできるんじゃないか』と、自分の存在価値を見失いそうになることがあります。そんな風に、優等生のまま大人になってしまったり、自分の存在証明に飢えていたりする人たちに向けて制作しています」
■5. ネガティブから芽吹く、ポジティブの兆し——酒井美奈・「Lorn Sprout」デザイナー
「Lorn Sprout」デザイナーの酒井美奈さんは、高校卒業後、実業団の柔道選手として約5年間を過ごし、怪我を経て就職したのち、バンタンデザイン研究所に入学しました。
酒井さん「私自身が生きてきた中で体験した『傷やネガティブさから芽吹いていく、ポジティブな要素』を、『Lorn Sprout』で表現していきたい」と意欲を見せます。
AWシーズンテーマ「Evidence Road」の着想源は、一番落ち込んでいた時期に出会った愛犬。「ただそばにいるだけで、心の安心」になるような「身体と心を包む服」の提案を目指します。
1次審査を通過したデザイナーたちは、9月30日の2次審査に向けて「トワル」制作にのぞみます。さらに、2次審査通過ブランドには、製品制作のサポートとして10万円が支給されます。
【PROFILE】
木村和花/「WWDJAPAN」ヘッドリポーター
INFASパブリケーションズ入社後、「WWDJAPAN」編集部にてサステナビリティ、海外コレクション、セレクトショップの各分野を軸に取材・執筆を手掛ける。ウェルネスやフェムテック、ジェンダー平等といったテーマにも関心を寄せる。
https://www.wwdjapan.com/author/a-kimura
岡本大陸/「DAIRIKU」デザイナー
1994年生まれ。バンタンデザイン研究所在学中に「DAIRIKU」を始動。
2016年「Asia Fashion Collection」グランプリを獲得し、2017年にニューヨーク・ファッション・ウィークでコレクションを発表。「TOKYO FASHION AWARD 2022」受賞。
Instagram:https://www.instagram.com/dairiku/